会長挨拶
第60回日本臨床生理学会総会の開催にあたり
会長 安達 仁
群馬県立心臓血管センター 副院長
この度、第60回日本臨床生理学会総会を開催することになりました。
会期は2023年10月21日、22日の二日間、場所は群馬県高崎市にあるGメッセ群馬です。オンサイトが中心ですが、プログラムの一部はweb参加も可能とさせて頂きました。
本会は既に第60回を迎えて大変歴史のある学会です。ヒトが生きている以上、形態のみならず機能が重要で、生理学は生体の機能を紐解く大変重要な分野です。近年、平均余命の延長に伴い、QOLではなくQALY(質調整生存年)が重要視されてきています。良好なQALYを得るためには、機能的に良好である必要があり、臨床生理学はその達成法を検討する使命を担っている重要な学問ですが、残念なことに近年の専門医志向に伴い、当学会が専門医の単位を認定できないことから参加者数が減少傾向にあります。
そこで、今回の学会では、「基礎生物学を知って臨床に思いを馳せる」とタイトルを銘打って、基礎的な側面を残しながらもやや教育的な側面を強調したプログラムを編成しました。基礎的な側面としましては、近年増加している消化器癌のマーカーについて東邦大学の島田英明先生にご講演を依頼し、また、近年見事に予後が改善した肝炎診療について第一人者である山梨大学の榎本信幸先生に解説していただきます。さらに、老化遺伝子発見者である黒尾誠先生に老化や腎機能障害と関連したリンの代謝につきご講演頂きます。また、最近のトピックスである内分泌攪乱物質について鯉渕典之先生からお話しいただき、まとめとして、小室一成先生に循環器病学の未来についてお話を頂きます。
教育的側面に関しましては、私が心臓リハビリテーションを専門にしている関係上、また、心臓リハビリテーションは人間の諸機能を改善させる優れた治療手技でもありますため、心臓リハビリテーション関連の内容が濃くなっております。伊東春樹先生に遠隔心臓リハビリテーションにつき解説していただき、その他CPXや心エコーのライブ等も行うことにしました。高橋哲也先生にも運動療法について解説をお願いしてあります。
本学会に参加することで、基礎的な考え方をもって臨床に臨むことができるようになれば、臨床のアウトカムがさらに充実するものと思われます。心臓リハビリテーション関連のセッションは、群馬県まで来県できないメディカルスタッフの方のことも考えてweb聴講を可能としました。心臓リハビリテーション指導士5単位も認定されます。皆様のご参加をお待ちしております。